『遠ざかる我が家』楽曲解説 B面後半

■『遠ざかる我が家』楽曲解説 B面後半■            構成/市川清師

 

 

10.Silky sky blue night

この曲も随分、昔からありましたけど、ライブでもやったことがありません。僕の中では作ったままので、こういう感じの曲は自分でも難しい、どうだろうというのがありました。ただ、曲自体は好きだったので、これも“この際だから入れてしまおう”、“この際だから全部、出してしまおう”という曲のひとつです。

これはAORというか、曲を作ったイメージは夜だったし、なんか、空が広がるような感じでした。あとはあんまりエッチな歌とかを作ったことがなかったので、そういうセックスみたいなものを対象とした歌をちゃんと(笑)1回作ってみようと思いました。

自分の中で難しかったのは、日本語の歌詞を書いていると、ルースターズの大江慎也もそうですが、佐野元春、SION、小沢健二、桑田佳祐……など、日本のロックとか、日本語の曲で、その言葉というものにエポック・メイキングなことをやった人達とたくさん演奏させてもらっています。言葉を作るのはすごく影響される部分もありますけど、やはり誰かみたいになってしまう、そういうことが時々あって、そういうインプットし過ぎもよくないと感じました。自分の中では“出来た!”と思っていても誰々と一緒だったということがたまにあります。そういうものは却下せざるを得ません。これはこれで、僕なりの世界観でいけたというのはあります。ただ、ひとつひとつをとると、どこかで聞いたことがあるようなセリフもあるし、これは新しいと思えないものもありますけど、組み合わせによって、雰囲気がガラッと変わるものもあると思います。自分のソロを作るという時に、まず、自分が歌わなければソロを作る意味がないと思っています。勿論、インストゥルメンタルの曲もやっていますけど、やっぱり自分が歌って、何かをするというのが自分の作品を作るのに一番、興味があります。自分で歌うなら歌詞も書かなければ意味がないという。誰かに書いてもらって、歌うというのもどうなんだろうという思いがあります。そういうこともあるかもしれませんが、やっぱり、詞と曲を書いた上で、何かをやるということではないと、僕が作品を作る意味ががないという感じがしています。

 

11.夜間飛行

 

「今日もまたこの街に夕暮れが訪れる」と、ほぼ同じで20年近く前に作った曲です。これも出来た時からこの歌詞だし、曲調も全く変わっていません。この曲もいろんな人とやってきました。最初から自分で歌おうと思って、作った曲です。ただ、20年ほど前だから、自分がどんな風に歌えるか、当時はよくわかっていなかった。音程に幅があって、僕の力量では歌うのが難しいですけれど、これは今回やらなければいつやるのか、みたいな感じだったので、そのまま、歌いました。たぶん、今だったら、絶対、作らない曲です。今は極力、頑張らなくてもいいように作っていますけど、僕にしては珍しいくらい、頑張っている感じの曲です。曲調は全然、頑張っていませんけど(笑)。

この曲も置き場所が難しかったというか、途中に置くような曲ではありません。この曲を最後に持ってきて、丁度いい感じで締まったと思います。最初から最後まで並べて、聞き終わった時に、いいアルバムが出来たという手ごたえがありました。こういうアルバムの在り方って、ありだろうと思いました。多少、バラエティには富んでいますけど、でもいまさら、ジャンルにこだわる必要もない。何とか風だとかは、ある意味、どうでもいいと思っています。聞いてくれた方がちょっと“世界一周”まではいかないけど、“世界半周”くらいした気分になってもらえればいいです。