日曜の朝

日曜の朝。

佐野元春から「ハートランドからの手紙」が届いた。

アルバム "After The Dawn" によせて。

なんも言えん。感謝です!

 

 

ハートランドからの手紙#2019.11

井上富雄の新作アルバム「After The Dawn」を聴いた

80年代中盤、自分が「カフェ・ボヘミア」というアルバムで音楽シーンに切り込んでいった時、ほぼ時期を同じくして、同じ匂いのするバンドを知った。ブルートニック。博多のポップ・ロックバンドだ。そのバンドでメインを取っていたのが井上富雄だった。時は英国からの新しい音楽が毎日のように聞こえてくる、そんな活気を帯びた時代だった。当時、NHKで音楽番組を持っていた自分は、会ったこともない彼らではあったけれど、同志のような思いもあって、彼らの曲をかけた。

それから10年後、自分の新しいバンド、ザ・ホーボーキング・バンドを立ち上げた時、井上富雄にベーシストとして参加してもらった。アルバム「フルーツ」のセッションが僕らの最初の仕事だった。以降、長年に渡って、僕らは共に音を奏で、旅をして、道を渡ってきた。

彼はベーシストとしてよく知られているが同時に非凡なソングライターでもある。それを証明したのがこの新作「After The Dawn」だ。

安定したサウンドだ。そこには、巧みなコード進行とハーモニー、リリック、適切なバンドの演奏がある。何よりも、くすんだ感情をロマンティックに唄いあげる富雄の唄がすばらしい。最初の音が流れてきた時、僕は心踊った。すぐに身を任せることのできる音楽は、そう多くない。しかしアルバム「After The Dawn」はどの曲も僕の心を捉える。

日常で傷ついているのは子供たちだけではない。むしろ今の時代、魂の救済が必要なのは大人たちだ。そんな大人たちに寄り添う、洗練されたロック音楽が求められている。それをアダルト・オリエンテッド・ロック=AORと言い換えてもいい。井上富雄の新作アルバム「After The Dawn」がまさにそれだ。

仲間が創りあげたいい音楽を聴くのはこのうえない喜びだ。

2019.11.15
佐野元春